・・・ 横浜で、Kは、サンドイッチを買い求める。「たべない?」 Kは、わざと下品に、自分でもりもり食べて見せる。 私も、落ちついて一きれ頬ばる。塩からかった。「ひとことでも、ものを言えば、それだけ、みんなを苦しめるような気がし・・・ 太宰治 「秋風記」
・・・熱いコーヒーを、ゆっくりのんだ。サンドイッチを、二切たべて、よした。資生堂を出た。 日が暮れた。 こんどはステッキを肩にかついで、ぶらぶら歩いた。ふとバアへ立ち寄った。「いらっしゃい。」 隅のソファに腰をおろした。深い溜息を・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・母と、さとは客間に火鉢を用意するやら、お茶、お菓子、昼食がわりのサンドイッチ、祖父のウイスキイなど運ぶのにいそがしい。まず末弟から、読みはじめた。祖母は、膝をすすめ、文章の切れめ切れめに、なるほどなるほどという賛成の言葉をさしはさむので、末・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
出典:青空文庫