・・・それからしてジャーナリスト等は、三角関係の恋愛や情死者等を揶揄してニイチェストと呼んだ。 何故にニイチェは、かくも甚だしく日本で理解されないだらうか。前にも既に書いた通り、その理由はニイチェが難解だからである。たしかメレヂコフスキイだか・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・サラリーマンから、再び、人民の声を反映し、同時に木鐸たる記者に、自身の本質をとり戻すジャーナリストたちの新しい希望と、それに対する数千万の人々の期待は、互に苦しい時代を経ているだけに、決して表面の交歓ではないと信じている。〔一九四五年十・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・日本のなかに、客観的な真実、学問上の真理、生活の現実を否定して、日本民族の優秀性と、侵略的大東亜主義を宣伝する文筆だけが許される段階に入りつつあった。ジャーナリストたちは、規準のわからない発禁つづきに閉口して、内務省の係の人に執筆を希望しな・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・ アグネス・スメドレーはアメリカの下層生活から育って来た革命的ジャーナリストである。彼女の「女一人大地をゆく」に溢れているつよい生活力は、彼女の政治的な成長とともに、そのアナーキスティックな要素を力づよく人民の発展的な歴史性に統一させた・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・そのころ内務省の中で、ジャーナリストたちを集めて、役所の注文をなす会合がもたれていた。そこで、何人かの文筆家が名ざされて、雑誌その他に執筆させないようにといわれたのであった。 三七年の十二月三十一日の午後、私は、重い風呂敷包みを右手にか・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・という諷刺小説を書いたイリフ、ペトロフ合作の長篇である。ジャーナリスト出身のペトロフが素材をあつめることを主に働き、詩人であるイリフが作品として書きあげてゆくという、新しい仕事ぶりで七年ほど前に完成された作品である。 主人公はオスタップ・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
こんどのアメリカ大統領選挙でトルーマンが勝利したことは、デューイをおどろかしたばかりでなく、日本の一部のジャーナリストをだいぶめんくらわせたらしかった。日本時間で十一月四日の午前、トルーマン当選確定となったあと、東京のあち・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・遠くから見て敬意を抱いていた芸術家たちが、ジャーナリストとして接触してゆくと、その人々のジャーナリズムへの態度が露呈され、人間的にも幻滅し文学的にも別な目をさまされる。そして悲しいことに、一種の文化的すれからしとなってしまう。「まんじ」が一・・・ 宮本百合子 「豪華版」
・・・当然であるその条件を、日本の人民自身が日本について語る場合、自分たちの運命について主張する場合にも持ってゆくためにこそ、ジャーナリズムは、ある甲斐のあるものでなければなるまい。ジャーナリスト自身とくに日本のジャーナリストとしてこの点にどんな・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
一九三七年十二月二十七日、警保局図書課が、ジャーナリストをあつめて懇談会を開く。その席上、ジャーナリストが自発的に執筆させないようにという形で、執筆禁止をした者、作家では中野重治、宮本百合子、評論家では岡邦雄、戸坂潤、鈴木・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
出典:青空文庫