・・・議会の開けるまで惰眠を貪るべく余儀なくされた末広鉄腸、矢野竜渓、尾崎咢堂等諸氏の浪花節然たる所謂政治小説が最高文学として尊敬され、ジュール・ベルネの科学小説が所謂新文芸として当時の最もハイカラなる読者に款待やされていた。 二十五年前には・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・でも、ジュール・ラフォルグの詩にあるように哀れなるかな、イカルスが幾人も来ては落っこちる。 私も何遍やってもおっこちるんですよ」 そう言ってK君は笑いました。 その奇異な初対面の夜から、私達は毎日訪ね合ったり、一緒に・・・ 梶井基次郎 「Kの昇天」
・・・そういう意味ではそのころに見た松旭斎天一の西洋奇術もまた同様な効果があったかもしれないのである。ジュール・ヴェルヌの「海底旅行」はこれに反して現実の世界における自然力の利用がいかに驚くべき可能性をもっているかを暗示するものであった。それから・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・ 以上は俳句の内容に関することであったがその五七五の定型についてもその成立が決して偶然でないことは次の所説から理解されようかと思う。 ジュール・ロマンという人が、フランス人の作ったいわゆるハイカイを批評した言葉の中におおよそ次のよう・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・ フランスのジュール・ロマンが第二次ヨーロッパ大戦のはじまったばかりの頃書いた『ヨーロッパの七つの謎』という一冊の小さい本が、日本語にも翻訳されている。それには、第一次ヨーロッパ大戦の後、もう二度と世界に悲惨事をまきおこすまいと希望する・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・主としてジュール・ロマンの「ヨーロッパの七つの謎」の書評であり、資本主義国家が第一次大戦後欧州の社会主義化をおそれて、ナチスに投資したことがどれほどの悲劇を招く原因となったかということ、また、ジュール・ロマンの「善意の人々」は理性的な方法を・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・これはジュール・ロマンの「世界の七つの謎」にはっきりかかれています。そして、ドイツの迷っている人達を愛国心だの復讐心などに統一して、そして、ヤング案に反対する、農村では地主が納税に反対するというような、きわめてうまい人心収攬のきっかけ、目先・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・の培養がどんな流血と犠牲と破壊とをよびおこすものであるかということについては、第二次世界大戦で、タンノウするまで学びつくしているのである。ジュール・ロマンの『ヨーロッパの七つの謎』一冊よめば、それはわかりすぎるほどよくわかる。 自由党そ・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・という、最も人間的な、従って最も文学的なモメントにおいて、日本の読者たちは、検閲の扉で、ぴったりとその興味ある世界から閉め出されてしまったのであった。「欧羅巴の七つの謎」というジュール・ロマンの著作は、第二次大戦前後におけるフランスの「・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
出典:青空文庫