・・・ たまたまその日がメーデーだったので、新聞はその方に多くのスペースを割かねばならず、大阪の片隅に起ったそんな出来事なぞ、どうでもよかったからだ――というわけではない。 もっとも、事件そのものは取るに足らぬ些事に過ぎなかった。事件とい・・・ 織田作之助 「夜光虫」
・・・ 以上自分は与えられたスペースで、青年の教養に資する視点から、倫理学研究の手引きのようなものを書いた。書くべき多くのものが残された。中世期の神秘主義の倫理観、古代のストアやエピクロス派の倫理観、スピノーザやショーペンハウエルの形而上学的・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・つまりはスペースと云うものがあって、万物はその中に、各、ある席を占めている。次に今日の演説は一時から始まります。そうしていつ終るか分りませんが、まあいつか終るでしょう。大概は日が暮れる前に終る事と思います。私がこうやって好加減な事をしゃべっ・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・e you ! I woke up early again this morning and felt “Chame's” unseen finger and embraced the vacant space tightly with a・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・小学校一年生の算数の本にもこの紙面にスペースの足りない憾みは感じられるのである。良書は内容の徳性に加えて、子供の心理の抑揚の溌剌さが尊重されていなければならないと思う。 宮本百合子 「“子供の本”について」
出典:青空文庫