・・・壁画のある、天井の高い大食堂の窓からは、灰色のうろこ形スレートぶきの小屋根、その頂上の風見の鳩、もと礼拝所であったらしい小さい四角い塔などが狭くかたまって見えた。塔の内に大小三つの鐘があるのも見える。 ガラス張の屋内温室の、棕梠や仙人掌・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・始めは、材木や何かをつんで置いたところに居たが、あとで気がついて竹で矢来をくみ、なかに、スレート、石のような不燃焼物のあるところにうつり、包を一つスレートの間に埋めて居た。が、火の手が迫って来ると、あついし、息は苦しいし、大きな火の子が、ど・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・バラックのスレートの屋根屋根、その彼方に突立つ葉のない巨大なる焼棒杭のような樹木。……遠くの物干へ女が出て来て、真白なシイツらしい布を乾した。女は去る。風が吹く。白い洗濯物は気違いのようにはためいた。曇った空とその砂塵の中で真白い一枚の布は・・・ 宮本百合子 「街」
出典:青空文庫