・・・俺達は百姓が二度集団的に擲り合ったのと集団的に魚スープ煮たのと、そういう集団を見ただけだ。どんな集団耕作だか、びっくらするヨ。一人トラクターで耕してるぎりで残りの組合員どもは何にもしねえ、わきで魚スープを煮てる! 共同耕作の始りに何もするこ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・それどころでなく、夜はお魚のスープをこしらえて御飯をスーさん、栄さんとりまぜ四人でたべ、丁度送って来た『文学評論』などよみ、いろいろ話し、十二時頃になった。 行って送ってあげようと云っているうち、私はきょうの用事を思い出しついでに一つふ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・どうか食欲をうまく保つよう御工夫下さい。スープは栄養よりもアッペタイトを刺戟するのでよいのだそうだけれども。ゆっくり手紙が書きたいけれども、私はまだ仕事が一しきり片づいていないので、このハガキで間に合わせます。テッちゃんが会いたがって、きょ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ おそくなって、野菜スープやサラドを運んで行ったが、まさ子は、悦び、「美味しそうだこと――御馳走になって見ようか」と云うばかりで、ほんの一口飲み下しただけであった。彼女は、なほ子を落胆させまいとして云った。「明日にでもなれば・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
・・・ お昼は托児所の台所でこしらえた温いスープとか粥とか、牛乳その他をたべるのだが、六つぐらいの組は、食堂のテーブルへスプーンを並べたり、アルミニュームの鉢を並べたりする役もするようになる。 小学校では―― 一・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・外から来たものでも四十カペイキでスープと肉・野菜が食える。 からりと開けはなされた大きい窓から、初夏の木立と花壇で三色菫が咲いているのが見えた。天井も壁も白い。涼しい風がとおる。――日本女は、婦人講習会員の間にかけて、黒パンをたべている・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 夕方の六時、シェードのないスタンドの光を直かにてりかえす天井を眺めつつ口をあいて私はYにスープをやしなって貰って居る。 わきの寝台に腰をかけ、前へ引きよせた椅子の上に新聞をひろげ、バター、キューリ、ゆで卵子二つ、茶でファイエルマン・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・独身者は近所の食堂でスープ二十カペイキ肉か魚野菜つき一皿、三十カペイキ。果物の砂糖煮十カペイキから十五カペイキ。こう三皿で「正餐」となってるが、もちろん、三皿食うときばかりはない。 財布と相談だ。但、スープにしろ、ソヴェト同盟のスープは・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・旅行については何もきかず、蜜柑の汁、すっぽんのスープ、牛乳、鶏卵などを僅に飲みながら、朝になり夜になる日の光を障子越しに眺めている。口を利くのは、まだ起きてはいけないかという質問と、何故こんな病気になったろうという述懐の時だけである。私の友・・・ 宮本百合子 「祖母のために」
・・・ 握ったスープ匙を頭の上でふりまわして、叱られた。叱りながら、父さんも、母さんも、ミーチャがそういう人間になれることを疑わないようだった。 ――見な! これが本当のプロレタリアート文化の進歩ってもんだ。俺は職工だ。工場でアルミニュー・・・ 宮本百合子 「楽しいソヴェトの子供」
出典:青空文庫