・・・歩きながら口ずさんでいるセンテンス、ふと気づいて指折り数えてみると、きっと、五七五調である。──ハラガヘッテハ、イクサガデキヌ。ちゃんと形がととのって居る。 思索の形式が一元的であること。すなわち、きっと悟り顔であること。われから惑・・・ 太宰治 「古典竜頭蛇尾」
・・・西洋人流の科学的な態度から見た客観的写生的描写だと思って見れば、これは実につまらない短い記載的なセンテンスである。最も有利な見方をしても結局一枚の水彩画の内容の最も簡単なる説明書き以外の何物でもあり得ないであろう。それだのにこの句が多くの日・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
言語の不思議は早くから自分の頭の中にかなり根深い疑問の種を植え付けていたもののようである。六七歳のころ、始めて従兄から英語の手ほどきを教えられた時に、最初に出会ったセンテンスは、たしか「猿が手を持つ」というのであった。その・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
出典:青空文庫