・・・ それを思うたびに、心に一つのおどろきが深まるように思うのは、女の真心、母の真心というテーマで描かれている傑作映画は、たとえば古く「ステラダラス」にしろ、ポーラ・ネグリがいかにも女優としての力量を示した「マズルカ」にしろ、実にその多くが・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・ ヨーロッパ文学の有名な古典をよむと、わたしたちは、それらの作品の多くが、予想されるよりもはるかに多く、青年の人間形成の問題をテーマとしていることにびっくりすると思う。 だれでも思い出す「若きウェルテルの悩み」をはじめ、ヘッセの傑作・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・男の雑誌に、異性との友情について書かれる記事は稀なのに、どうして女性のための雑誌は、時を置いてはこのテーマをくりかえす必然におかれているのだろうか。特に、日本の婦人雑誌では、女の幸福についての論議や異性の間の友情の可能についての文章が多い。・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・は、私たち素人の目では、前半、後半とテーマがわかれていた感じである。文芸映画としてのよりどころは、後半にあったと思うが、後半での妻の演技的迫力がもう一つ足りなかったので、誠意はあるにかかわらず心理的な動きのボリュームが減った。 この頃は・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・芸術家としての鴎外が興津彌五右衛門の境地にのみとどまり得ないで、一年ののちには更に社会的に、その社会を客観する意味で歴史的に、殉死というテーマをくりかえし発展させて省察している点は、後代からも関心をもって観察せられるべきであろうと思う。・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・夏の間にこころみられていた作品とは題材もテーマもちがっていた。当時文化活動に献身していた一人の同志の健気の生活から感銘された作品である。同じころ、創作のためには非常に無理だった条件のなかで、しかも小説をかく必要があったとき、佐多稲子が「進路・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・ 地殻の物語は、そこに在る火山、地震、地球の地殻に埋蔵されてある太古の動植物の遺物、その変質したものとしての石炭、石油その他が人間生活にもたらす深刻な影響とともに、近代社会にとって豊富なテーマを含蓄している。岩波書店から出ている「防災科・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・の」「条件がわるかったのよ」「日本人の何人が軍国主義者でなかったでしょう。今そうではなくなっていれば、もうそれでいいじゃないの」 榕子の女としての考えかたに、そっくり「結婚の生態」のテーマを辿ることができる。「生きている兵隊」の血にそん・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・それに音楽というもの、音の不断の刺戟というものが人間の頭脳に生理学の上からどう影響するものか、非常に研究されるべき神経学、心理学のテーマがあるとも思われます。音楽家の精神内容には、舞台に立つ者として俳優などと共通の古い伝統の感情のほかに、何・・・ 宮本百合子 「期待と切望」
・・・時にはテーマの屈折角度から、時には黙々たる行と行との飛躍の度から、時には筋の進行推移の逆送、反覆、速力から、その他様々な触発状態の姿がある。未来派は心象のテンポに同時性を与える苦心に於て立体的な感覚を触発させ、従って立体派の要素を多分に含み・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫