・・・ 町方から小半里の間かなりの傾斜を持って此村は高味にあるのでその一番池から水を引くと云う事は比較的費用も少しですみ、容易でも有ろうと云うのでその話はかなりの速力で進んで、男女の土方の「トロッコ」で散々囲りの若草はふみにじられ、池の周囲に・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・赫土には少し、草も生えているし、トロッコの線路も錆びている。 Lをさかさにしたような悠やかな坂をみのえはのぼった。坂の上は草原で、左手に雑木林があった。その奥に池があった。池は凄く、みのえ一人で近よれない。みのえはだらだらと下った草原の・・・ 宮本百合子 「未開な風景」
・・・ つよさは底入れとなれ 敏感に――だがすぐかたづけるな 親父の薄はかさはここだ○大衆的活動へのうつりかわり 重く、やっこらとトロッコを別のレールにのせるような努力。・・・ 宮本百合子 「無題(九)」
出典:青空文庫