・・・然るに文人に強うるに依然清貧なる隠者生活を以てし文人をして死したる思想の木乃伊たらしめんとする如き世間の圧迫に対しては余り感知せざる如く、蝸牛の殻に安んじて小ニヒリズムや小ヘドニズムを歌って而して独り自ら高しとしておる。一部の人士は今の文人・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・ 浪曼派の主張は、その名にふさわしいロマンティックな張りと文章の綾と快き吐息までを添えて、途方にくれた心の多くの面を撫でたのであったが、青年のニヒリズムを超剋しようとして自我と主観の飛躍を期したこの声も、ロマンチシズムすべてに同情を示し・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・荷風の消極の面を白鳥は自身の永年の惰力的な楽なニヒリズムで覆うてしまっているのである。 また、菊池寛のかつぎ出したものに対して、白鳥が、保護を拒絶した態度は興味があるけれども博覧な彼もついに見落していることがある。それは、この地球上には・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫