・・・ 敢て獣の臭さえもしないで、縦の目で優しく視ると、両方へ黒いハート形の面を分けた。が牝牛たる大魚を提げて駈通ったものがある。「鱒だ、――北上川で取れるでがすよ。」 ああ、あの川を、はるばると――私は、はじめて一条長く細く水の糸を・・・ 泉鏡花 「七宝の柱」
・・・ 彼は、学識と伝統的なセルフレストレーンの力で、先ずハートに感じるものを、頭の力で整理したと云う人であった。人情によって理解し、直覚し得たところを、理想に燃える知で文学にした。情と知とを二分別し得るものとすれば、彼は第一に情の人で、それ・・・ 宮本百合子 「有島武郎の死によせて」
・・・ 〔一語不明〕“Chame” sweet dream I came home to sleep. Yes, what a wonderful power she has ! Cherish your heart, my dear “Cham・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・ イヤハート夫人の「最後の飛行」を読むと、或る年の誕生日のお祝いに彼女のお母さんが一台の中古の飛行機をくれたことから、彼女の婦人飛行家としての出発が始まったことが語られていて、そういう日常の感情をこしらえた条件としてアメリカにフォードが・・・ 宮本百合子 「この初冬」
・・・『ミケルアンジェロ』小倉金之助さんの、『家計の数学』山の好きな方に、チンダル『アルプスの旅より』又は『アルプスの氷河』など興味あるでしょうし、女の活動面が新しく展かれてゆく一つの姿としてアメリカのイヤハート夫人『最後の飛翔』も心にのこる本で・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・om Annette & Sylvie “Annette felt that, alone, she was incomplete; incomplete in mind, body and heart.” “She had r・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・「……左胸のあらわなるはハートの無垢なるを示し……」 すると、煙草をふかしつつ仰向に横になっているスムールイが、口を挾む。「誰のがあらわなんだ?」「書いてないよ」「女の胸だろう……。チェッ、放蕩者ばっかりだ!」 最初のう・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・旅人の口はかるく開いて夕づゝ(を讚美のうたはまっかなハートからほとばしり出るようにうたわれました。情のたかまった若い十六にみたない詩人は此の世の人とも思われない女の胸によったまま手で胸を押えて目は上を見ながら美くしい美くしい声でうたって居ま・・・ 宮本百合子 「無題(一)」
・・・中国に対する諸外国人の抱いている優先の偏見に向って、中国民衆のハートをひらいて見せ、そこにある声の響きをつたえようとしているのである。「大地」からはじまる王家三代の物語の最後は、アメリカで教育を受けつつ民族的矜持を失うことのなかった中国・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・に憧るる時はクリアハートとクリンヘッドとをもって「人格」を形づくる刹那である。吾人が真正の社会主義の理想に歩を進め、ダンテの楽園に到達すべき出発点である。世人がすべてこれに傾向する時 To thee be all man Hero の境地は・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫