・・・然し、彼が、性格的にあれ程殉情的なところと、理想主義、殆どストイックなところとのあったことに、今度のパニックは重大な関係を持つこと丈は争われない。 彼には、実に多くの、美しい、センチメンタリティー、甘さがあった。自分のような女性、若者に・・・ 宮本百合子 「有島武郎の死によせて」
・・・きょうのあなたのお手紙にパニックは起さずとあり、又向い風とかきかけて消されてあって笑えました。そして、こうやって一人自分のカンシャク姿に笑えるのは、やはり一つの慰安なのよ。こんな紙にこんなにかくと、何もかかないうち何と長々と、お軽の手紙のよ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・大正九年の大パニックで破産したのは郵船の株主ではなかった。米一升が五十銭を突破して米騒動がおこった。やっぱりこまったのは民衆であった。 ヨーロッパにおこった第二次大戦の過程のすきをくぐって、満州、中国、南方までのきりとりをたくらんだ結果・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・墾地の村々も次第に耕地が肥え、田畑の収穫もましになって、三つ並んで街道の傍にあった池の一つは郡山の町の貯水池となったり、一番池のそばにはいくつかの工場が建ったりして、日露戦争を経、欧州大戦の余波の経済パニックも経た。 もうこの頃には、ど・・・ 宮本百合子 「村の三代」
出典:青空文庫