・・・ひろい板がこいの上は生産に従う労働者と農民の鮮やかなパノラマ式画でおおわれ、赤いイルミネーションが、こっち側の歩道を歩く群集からも読める。 レーニニズムノ旗高ク 五ヵ年計画ヲ四年デ! たなびく赤旗が強烈な夜の逆電光をうけとるとい・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・薄暗い部屋だから、眼に力をこめて凝視すると、画と実物の貝殼などとのパノラマ的効果が現れ、小っぽけな窓から海底を覗いて居るような幻覚が起らない限でもないのだ――大人にパノラマが珍重された時代が我々の一九二六年迄かえって来る。―― 間もなく・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・共同温泉が坂のつき当りにパノラマ館のようなペンキの色で立って居た。入口のところで、久しぶりに悠くり湯で遊んで来た一人の小娘が、両膝の間でちょっと風呂敷包を挾んだ姿で余念なく洗髪に櫛を通して居た。髪はまだ濡れて重い。通りよい櫛の歯とあたたかそ・・・ 宮本百合子 「町の展望」
出典:青空文庫