・・・今日は、インテリゲンツィアとしての日常からも真にインテリゲンツィアたらんとすれば当面する疑問があり、そのことでは労働者の持つ疑問と一致して来ているところに、時代の深刻な推移が反映し、文学に新たな内容のヒューマニズムが求められる理由があるので・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
・・・ 一九三五年以降のフランスの社会的事情の変遷、人民戦線の拡大等は、文化の上にヒューマニズムの提唱をもたらした。小松清氏等によってヒューマニズムの提唱は日本にも移された。日本に於けるヒューマニズムの紹介は、社会主義的リアリズムがかつて・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・、舟橋氏等によって提唱されはじめた能動精神、行動主義文学という言葉は、当時フランス文壇の一部、主として新フランス評論による人々ラモン・フェルナンデス、アンドレ・マルロオ等によって唱えられていた「行動のヒューマニズム」を小松清氏の訳語に従って・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・行動主義。ヒューマニズム。報告文学。生産文学。何と夥しい呼び名がこの間に響いたことだろう。これらの声々は、ある点から見ればまことに悲痛な、今日の日本の文学における生ける人間の存在の消失に伴うつむじ風の唸りであり、作家と歴史とのめぐり合わせに・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ ファシズムにたいしてたたかう民主精神、ヒューマニズムの主張としてフランスを中心におこった人民戦線の運動が、この度の大戦中、どんなに社会的・文学的に高貴な地下活動を行ったかは、今日私たちが少しずつ学びはじめている。同じその時期、日本での・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・その権力の行為にはどんなスウィフトも描き出さなかった諷刺の対象があり、ルネッサンスのシェクスピアのヒューマニズムでは予見さえされなかった悲劇と笑劇のテーマがある。 わたしたちは、ほかならぬこの日本の土地に生れ、そこに生き、汗と涙と時たま・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・そして社会がもっているこの封建の暗さのために、日本の文学上の重大なエポックであった自然主義もヒューマニズムもデカダニズムさえも、日本的な変種としてあらわれた。日本的な変種の現象は、自然主義の社会観を社会文学の思想と実践に発展させなかった。家・・・ 宮本百合子 「自我の足かせ」
・・・また、同じフランス文学によっているきょうの同時代の人々の間でも、時代性ぬきのフランス派――それは、ヒューマニズムの世界史に立つ展開とその具体的な内容について、さしたる重要性を見ようとしない立場の人々と、第二次大戦を通じてフランス人民の生活と・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ ヒューマニズムの問題 本月もヒューマニズムの問題はほとんどすべての雑誌にとりあげられている。ヒューマニズムがこんにちの現実の中で持っている健全性への可能は、文学の視野をすでにその発展のためには、ある意味で狭隘・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・ 今日知性の作家と称せられている阿部知二、行動主義とヒューマニズムを唱えた舟橋聖一、「人生劇場」によって自身の世界を作った尾崎士郎、「多甚古村」の作者である井伏鱒二等が、やがて一昔の十年前は、この「新興芸術派」に参加していたことも、さま・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫