・・・オタンチン・パレオロガスというユーモラスな表現が女の知性の暗さに与えられているばかりか、ミュッセの詩の引用にしろ、タマス・ナッシの論文朗読の場面にしろ、女は厄介なもの、度しがたきものと観る漱石の心持は、まざまざと反映している。「猫」のなかで・・・ 宮本百合子 「漱石の「行人」について」
・・・ ユーモラスと感じてそれを聞くには、女のひとが分別あるべき年格好であるし、女のいじきたなさと微笑するには余り優越感めいた傍若無人さがつよく湛えられている。人々は、苦々しさをもって、其をきかされていたのであった。 東京に進駐軍が来てか・・・ 宮本百合子 「その源」
・・・ 重吉は、やっとわかったがまだ怪訝だという風に、「しかし、ひろ子の調子に、そんなユーモラスなところはなかったぜ」と云った。「そうだったこと?――」 ひろ子は、恐縮しながら、いたずらっぽく承認した。「そこが、つまりあな・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・をちらりと見せて小枝子はユーモラスに首をすくめて笑った。「何だか苦しかった。どっかに今朝の『女の言葉』を見た人がいて、ははん、あれだな、なんて見られているんじゃないかと思って」「まさか!」笑い声の中から、小枝子が、「現実に、ひる・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
出典:青空文庫