・・・ ワットやステブンソンやヱヂソンは彼が理想の英雄である。そして西国立志編は彼の聖書である。 僕のだまって頷くを見て、正作はさらに言葉をつぎ「だから僕は来春は東京へ出ようかと思っている」「東京へ?」と驚いて問い返した。「そ・・・ 国木田独歩 「非凡なる凡人」
・・・歴山王、ナポレオンの功業を察し、ニウトン、ワット、アダム・スミスの学識を想像すれば、海外に豊太閤なきに非ず、物徂徠も誠に東海の一小先生のみ。わずかに地理歴史の初歩を読むも、その心事はすでに旧套を脱却して高尚ならざるを得ず。いわんや彼の西洋諸・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・というと、それはそれは急にお顔色が変ったこと、ワットお泣なさったそのお声の悲そうでしたこと。僕はあんなに身をふるわしてお泣なさるような失礼をどうしていったかと思って、今だに不思議でなりませんよ。そしてその夜は、明方まで、勿体ないほど大事にか・・・ 若松賤子 「忘れ形見」
出典:青空文庫