・・・それを可恐くは思わぬが、この社司の一子に、時丸と云うのがあって、おなじ悪戯盛であるから、ある時、大勢が軍ごっこの、番に当って、一子時丸が馬になった、叱! 騎った奴がある。……で、廻廊を這った。 大喝一声、太鼓の皮の裂けた音して、「無・・・ 泉鏡花 「茸の舞姫」
仙術太郎 むかし津軽の国、神梛木村に鍬形惣助という庄屋がいた。四十九歳で、はじめて一子を得た。男の子であった。太郎と名づけた。生れるとすぐ大きいあくびをした。惣助はそのあくびの大きすぎるのを気に病み、祝・・・ 太宰治 「ロマネスク」
・・・多婬の男子が妾など幾人も召使いながら遂に一子なきの例あり。其等の事実も弁えずして、此女に子なしと断定するは、畢竟無学の臆測と言う可きのみ。子なきが故に離縁と言えば、家に壻養子して配偶の娘が子を産まぬとき、子なき男は去る可しとて養子を追出さね・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫