・・・三井高雄氏のような東洋屈指の大財閥の一族ならば、妻をつれ、娘をつれ、何処へ行くのも当然だろうが、片山哲の一行がコーへ行ったばかりか、ドイツ、イギリス、フランス、アメリカと巡遊して、帰ってきた菊江夫人から「あちらでは家事が機械化されていて、便・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・森鴎外の「阿部一族」の悲劇が、殉死のいきさつをめぐっての武士間の生存闘争であることに、二重の悲劇の意味がふくまれるのである。 最近十数年間、日本人は「滅私」という標語で統一しようとされて来た。近代社会の必然として、いくらかは日本にも生れ・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・日本の資本主義の歴史的な弱さの上に、アメリカの文化の――いわゆる高度なる文化の――面だけをうつし植えようとすれば、現にこんにち日本代表として外国へ行ける人々が、三井一族その他の特権階級の者であるように、人民すべてのためのよりゆたかな、人間ら・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・ 時期をひとしくして、天皇の一族とその宮中生活について、あれやこれやの記事がはやりはじめた。天皇が若い皇太子としてフランスに行っていたころの平民的な思い出話。高松宮が大阪で社会見学をした――と云ってもキャバレーやバーめぐりであるが、どた・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・これまで日本歴史の家系譜の中にはっきり名が現われている婦人は藤原家も道長の一族で后や、中宮になったり王子の母となったりした女性だけである。美しきヘレネのように、藤原一族の権力争いのために利用価値のあるおくりもの、または賭けものであった婦人達・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・一、恢復して伝道、〔欄外に〕Leading passion for Utari. 周囲の人 母 好人物 ドメスティック 弟 山雄 富次郎 バチェラー一族 姉 浪花節語り ・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・嫡子権兵衛は父の跡をそのまま継ぐことが出来ずに、弥一右衛門が千五百石の知行は細かに割いて弟たちへも配分せられた。一族の知行を合わせてみれば、前に変ったことはないが、本家を継いだ権兵衛は、小身ものになったのである。権兵衛の肩幅のせまくなったこ・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・蜂谷の一族は甚五郎の帰参を快くは思わぬが、大殿の思召しをかれこれ言うことはできなかった。 甘利は死んでも小山の城はまだ落ちずにいた。そのうち世間には種々の事があった。先に武田信玄が死んでから七年目に、上杉謙信が死んだ。三十六歳で右近衛権・・・ 森鴎外 「佐橋甚五郎」
・・・大夫が家では一時それを大きい損失のように思ったが、このときから農作も工匠の業も前に増して盛んになって、一族はいよいよ富み栄えた。国守の恩人曇猛律師は僧都にせられ、国守の姉をいたわった小萩は故郷へ還された。安寿が亡きあとはねんごろに弔われ、ま・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
・・・この祖父を初めとして一族の内には役者になったものが二十六人あるという。彼女の父アレサンドロは役者としては大して成功しなかったが、絵画に対しては猛烈な愛情を持っていた。 エレオノラの初舞台は一八六一二年、彼女が四歳の時であった。十四になっ・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫