・・・もう一月で子供が生れることになっていたからである。 ツァウォツキイは無縁墓に埋められたのである。ところがそこには葬いの日の晩までしかいなかった。警察の事に明るい人は誰も知っているだろうが、毎晩市の仮拘留場の前に緑色に塗った馬車が来て、巡・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
・・・ こういうことを考えて小生は一月一日に父の計画を阻止する手紙を書いた。志は結構であるが、それを有効に実現することができない。臣民として「なんの役にも立たぬ」ことを実行するよりは、「何か役に立つ」ことを実行する方が忠である。現下の険悪な世・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫