・・・それだのに、ブルジョア書籍店と同じような体裁だったソヴェト同盟の本屋の内部は質において社会主義的に一躍した。学問は、本はプロレタリアート、農民、一般勤労者の日常必需品だ。その階級的武器を、出来るだけ正確に、出来るだけたやすく、みんなの手に渡・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・発展しない時期の作者はそれを描き得たが、一躍した後、それが書きつづけられなかった。これも深甚な興味があります。自分のこととして、今これから大長篇を書くことの出来るのをうれしく思います。それは必ず貫徹し得るから。まことに生活の結晶であるから。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・結婚によって自分の職業もやめ、一躍有閑夫人めいた生活に入りたいという希望をもっている人が、今日のような浮動した社会事情の時はその夢を実現する可能が意外のところにあるのかもしれない。そういう人生の態度を認めている人たちは、周囲からの軽蔑を自分・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・永年の窮迫と不遇から時局によって世間的に一躍し、温泉へ行って忙しい忙しいと小説を書きとばしているというような農民生活の在りようを、農村生活の現実とてらし合せて考えたとき、その作品が、かち得る賞というものについて、人の心は単純にあり得ないのも・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・アカデミックな国文学者の著になる和泉式部の研究を土台として、一躍情熱の女詩人与謝野晶子への讚美となることの腑に落ちなさは一般文化人の胸にありつつ、何故輿論としてそれが発言されないのであろうか。文学に即して見れば、従来の国文学研究が実社会から・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・その同じ同志小林は、僅か一二ヵ月の間に一躍、中條とともに「日本のプロレタリア文学の発展に最悪の影響をあたえている連中」の一人とされたのである。しかも、吾々は一人として、同志林と小林との間に、プロレタリア文学についての討論が行われたことを知ら・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・婦人民主クラブはまだやっとヒヨッコのあゆみだし、新聞が特別な性質のものである上に用紙の制限その他の理由で一躍商業新聞と競争してゆけようとも思えない。だけれども事務所へ来てみると六、七人の男の人がぞっくりとつめていて、それぞれに家族もあるだろ・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・が出てから一躍有名になり有名になったことに絡んで又そこに別な荒っぽい波の打って来た前後のことをありのまま書き連ねたものである。 ここには、野沢富美子が、急に自分をとりかこんで天才だの作家だの人気商売だからと半ば嚇すように云ったりする人間・・・ 宮本百合子 「『長女』について」
・・・ 極言すれば、理想を高唱するものも、それに鼓舞されて一躍新生涯を創始しようとする者も、またはそれを傍観するものも、共に、貧弱な沈潜力の所有者であるようにさえ感ぜられる。 強固に、深刻に人生の意識、人類の内容を考察する者が、どうしてよ・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・ 異国情調を求めて来ていた群司次郎正は一躍、「ハルビン脱出記」の筆者となった。文中何というかと思うと「支那人の心情は根本的に獣である。これをよく知っているのはロシア人たちである。かつてハルビンが帝政華かなりし頃はロシア人は支那人を鞭で打・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
出典:青空文庫