・・・パアレーの『万国史』。フランクリンの『自叙伝』。ゴールドスミスの『ウェークフィルドの牧師』。それからサー・ロジャス・デカバリイ。巴里屋根裏の学者の英訳本などである。中村敬宇先生が漢文に訳せられた『西国立志編』の原書もたしか読んだように思って・・・ 永井荷風 「十六、七のころ」
・・・ただに今日、熱中奔走する者のみならず、内外に執行する書生にいたるまでも、法律を学ぶ者は司法省をねらい、経済学に志す者は大蔵省を目的とし、工学を勉強するは工部に入らんがためなり。万国公法を明らかにするは外務の官員たらんがためなり。かかる勢にて・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・古今万国、その例少なからず。ゆえに今、我が邦にて洋学校を開くは、至急のまた急なるものにて、なお衣食の欠くべからざるが如し。公私の財を費すも愛むにいとまあらず。一、学問は、高上にして風韻あらんより、手近くして博きを貴しとす。かつまた天下の・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ひろく万国の書を読て世界の事状に通じ、世界の公法をもって世界の公事を談じ、内には智徳を脩て人々の独立自由をたくましゅうし、外には公法を守て一国の独立をかがやかし、はじめて真の大日本国ならずや。これすなわち我が輩の着眼、皇漢洋三学の得失を問わ・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・ 数百年来の習俗なれば、これを酷に咎むるは無益の談に似たれども、今の日本は、これ日本国中の日本にあらずして、世界万国に対する文明世界中の日本なれば、いやしくも日本の栄誉を重んずる士人においては、少しく心する所のものなかるべからず。試みに・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・幕末の、進歩的な藩に置かれた藩学校は、当時表面上は幕府法律で禁じられていた英、蘭学の学習を秘密に行ったり、「万国」の事情に精通しようとする努力を示した。それは、たしかに幕府政治の無力を知り、封建制におしひしがれている社会生活について沈黙して・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・左手につづく国立物品販売所の正面には、イルミネーションで、万国の労働者団結せよ!と、書き出されている。 広場の土は数十万の勤労者の足に踏みしだかれ、ポコポコになって、昼間の熱気を含んでいる。ところどころに急設された水飲場・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・こと、民間性が重んじられるべきこと、文化の相互的理解を深める機会として大国の襟度の示さるべきこと、又、年を同じくして日本文化連盟主催の万国文化大会も開催される由であるが、これとペンクラブの大会とは「依立する主軸と意図に相違ある」こと等が、諸・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 懐しい日本語で、万国の労働者結合せよと書いた幟も飾ってある。 レーニン廟の赤いイルミネーションは、メーデーの夜、一時過ぎてもまだ絶えないモスクワの群集を照らしながら、レーニズムノ旗高ク五ヵ年計画ヲ四ヵ年・・・ 宮本百合子 「勝利したプロレタリアのメーデー」
・・・湯呑の一つに赤旗を背景に麦束をかこんだ鎌と鎚の模様がついていて、黒い文字で「万国のプロレタリアート、結合せよ!」 ネ河のはやいひろい音のない流れでめまいしそうなのは表側――河岸通に向った室だけだった。壁画のある、天井の高い大食堂の窓から・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫