・・・新撰映画脚本集、下巻。以上ただ手に触れるに任せて一読しただけのものを並べたに過ぎない。すべてが良書だというわけではない。翻訳を読むには用心しなければいけない。映画の実例についての著者の所論や感想は「続冬彦集」に集録してあるから読んで・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
「猫」の下巻を活字に植えて見たら頁が足りないから、もう少し書き足してくれと云う。書肆は「猫」を以て伸縮自在と心得て居るらしい。いくら猫でも一旦甕へ落ちて往生した以上は、そう安っぽく復活が出来る訳のものではない。頁が足らんから・・・ 夏目漱石 「『吾輩は猫である』下篇自序」
・・・それから下巻になると、矢張り多少はそれ等の人々の影響もあるが、一番多く真似たのはガンチャロフの文章であった。 さて『浮雲』の話の序でだが、前に金を取りたい為にあれを作ったと云った。然う云って了えば生優しい事だが、実はあれに就いては人の知・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・外交史の下巻はどうしたかしら? 聞いてみましょう。訳は一刻を争うから雑なものが多いのですね。うけ負仕事のようにやるから。いずれ送って頂いて私も読んでもらいましょう。十月一杯は一冊も本読まず、縫直しさわぎで暮れましたから。今月からは少し落着い・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫