・・・ 我国の国体の精華が右の如くなるを以て、世界的世界形成主義とは、我国家の主体性を失うことではない。これこそ己を空うして他を包む我国特有の主体的原理である。之によって立つことは、何処までも我国体の精華を世界に発揮することである。今日の世界・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・『近代文学』のグループといえば、ブルジョア民主主義の限界内で、個人主義的な主体性の確立の論議にとらわれていたようだけれども、去年の夏からファシズム反対の積極的な活動体となってきています。少くともこんにちのまじめな文化人は、一九三〇年代の終り・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・文学、人間解放のため文学がもっている基本課題をとりあげ、それを正当に推進させようとする努力において、ちっとも古びていないばかりか、民主主義文学の時代に入ってからこと新しく揉まれて来ている階級性の問題、主体性の問題、社会主義的リアリズムの問題・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・現在のアメリカ人にとってきらいなことは、きらいなことだときめるだけですむかのように、それから先の追究をすてているところに、アメリカの明るさと同時に異様な主体性の没却を示している。 そして、巨大な現象をつかみながら、作家の主体的角度が消失・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・丹羽文雄が主体性ぬきの現実反映のリアリズムからぬけ出て、少くとも歴史の前進する角度をふくんだドキュメンタリーな作品へ進もうとして、一九四九年にはその素材の選択そのものにおいて、まず歴史的なふるいわけが必要であることを発見したと思われる。「塩・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・この三年間に、反小林多喜二の慣用語として、主体性を云い、人民的民主主義の方向を抹殺して、個人を云い自我を云いたてた人々は、現在、その人々の目にもあきらかなように、反動的農民組合の分派が、自分たちを主体派とよび、労働組合の分裂工作が民主化同盟・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
出典:青空文庫