・・・広い世の中には一つくらい、わたしの主張を容れてくれる婦人雑誌もあるはずですから。 保吉の予想の誤らなかった証拠はこの対話のここに載ったことである。 芥川竜之介 「或恋愛小説」
・・・などと都合の好いことを主張していた。「そこを彼女のためにはいって来いよ。」「ふん、犠牲的精神を発揮してか?――だがあいつも見られていることはちゃんと意識しているんだからな。」「意識していたって好いじゃないか。」「いや、どうも・・・ 芥川竜之介 「海のほとり」
・・・しかしながら、彼らが十分の自覚と自信をもって哲学なり、芸術なりにたずさわっていると主張するなら、彼らは全く自分の立場を知らないものだ」という意味を言われたのを記憶する。私はその時、すなおに氏の言葉を受け取ることができなかった。そしてこういう・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・なぜなら、彼は精神生活が、物的環境の変化の後に更生するのを主張する人であるから。結局唯物史観の源頭たるマルクス自身の始めの要求にして最後の期待は、唯物の桎梏から人間性への解放であることを知るに難くないであろう。 マルクスの主張が詮じつめ・・・ 有島武郎 「想片」
一 数日前本欄に出た「自己主張の思想としての自然主義」と題する魚住氏の論文は、今日における我々日本の青年の思索的生活の半面――閑却されている半面を比較的明瞭に指摘した点において、注意に値するものであった。け・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・取をする内に、娶るべき女房の身分に就いて、忠告と意見とが折合ず、血気の論とたしなめられながらも、耳朶を赤うするまでに、たといいかなるものでも、社会の階級の何種に属する女でも乃公が気に入ったものをという主張をして、華族でも、士族でも、町家の娘・・・ 泉鏡花 「政談十二社」
・・・ が、鴎外は非麦飯主義で、消化がイイという事は衛養分が少ないという事だという理由から固く米飯説を主張し、米の営養は肉以上だといっていた。 或る時、その頃私は痩せていたので、ドウしたら肥るだろうと訊くと、「それは容易い事だ。毎日一・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・文人自身も亦此の当然の権利を主張するを陋なりとする風があって、較やもすれば昔の志士や隠遁家の生活をお手本としておる。 世界の歴史に特筆されべき二大戦役を通過した日本の最近二十五ヵ年間は総てのものを全く一変して、恰も東京市内に於ける旧江戸・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・は忠君を説く、愛国を説く、社交を説く、慈善を説く、廓清を説く、人類の進歩を説く、世界の平和を説く、然れども来らんとする審判を説かない、彼等は聖書聖書と云うと雖も聖書を説くに非ずして、聖書を使うて自己の主張を説くのである、願くば余も亦彼等の一・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・かゝる一群の作家こそ、独り芸術の力の何たるかを解し、そして、童話こそは、詩的要素に富む、芸術でなければならぬと主張する輩です。 学校に於ける画一教育の長所と短所は、すでに世論によって明にされたるが如く、彼等の、社会的という言葉の意味・・・ 小川未明 「新童話論」
出典:青空文庫