・・・例えば天気予報などもある意味においてそうである。第一次の近似だけでもそのつもりで利用すれば非常に有益なものである。第二次第三次と進むには多大の努力と時日とを要する事は云うまでもない。これも学問を応用しようとする学者と、応用の結果を期待する世・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・そこには意志と称する非科学的な要素が強く作用しているために、一定の資料によって心理過程を単義的に予報する事が出来ない。従って、作者の心理過程の描写の正否を判断する標準が判然としていない。これは精神科学が物質科学ほどに堅固な地盤におかれていな・・・ 寺田寅彦 「文学の中の科学的要素」
・・・海流の研究の結果から氷洋の中に未見の島の存在を予報したこの人には「日光」や「カブキ」は問題にならなかった。地球磁力や気象の観測を受け持って来たただ一人の婦人部員某夫人は、男のように短く切りつめた断髪で、青い着物を着ていた。どこか小鳥のような・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・測候所では、太陽の調子や北のほうの海の氷の様子から、その年の二月にみんなへそれを予報しました。それが一足ずつだんだんほんとうになって、こぶしの花が咲かなかったり、五月に十日もみぞれが降ったりしますと、みんなはもうこの前の凶作を思い出して、生・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
出典:青空文庫