・・・その子のそばには、真っ赤に塗った二輪車が、置いてありました。正吉くんは、知らない子のうしろに乗って、肩につかまると、風を切って、風のように、その自転車は走りました。いくつかの、まだ見たことのない森や、まだ知らない道を通って、やはり原っぱの中・・・ 小川未明 「少年と秋の日」
・・・馬種改良の目的だから、馬は二輪車をつけて走るんだ。 ――お前に競馬のことを聞いたって、ものにならないのは、わかってるよ。――おや、これは? ――劇場は、どこでもそこの壁新聞をもっている。工場や役所、学校と同じに。――劇場壁新聞の展覧・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・木の間をぬけて草道はうねりあっちの林へ消えているその道の果はこの庭この間の嵐で 松の落葉の散りしいたこの小径はよろこびの小径夕方、六時が半分すぎた頃この道から おかしな二輪車があらわれる 草の上だから・・・ 宮本百合子 「よろこびはその道から」
出典:青空文庫