・・・ 十五六歳のういういしい情感の上にそのさまざまな姿が描かれるばかりでなく、二十歳をかなり進んだひとたちも三十歳の人妻もあるいは四十歳を越して娘が少女期を脱しかけている年頃の女性たちも、率直な心底をうちわってその心持を披瀝すれば、案外にも・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・みなさまから頂くもので、こんにちの事情の中にあってさえ一つの闇買いもしないで過せる首相の妻という立場にいたら、この四十七歳の人妻も前科者にはならなかった。自分で、物価の統制に関する法律が悪法であると明言しながら、それが法律であるからにはひと・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・漱石の作品のなかでは、偽りを未だ知らない若い女の可憐さが才走った女たちと対比的に描かれているが、人妻となっている女が、周囲と自分の偽りを捨てて本心に生きたときは「それから」の代助に対する三千代の切迫した姿となり、「門」の宗助により添う、お米・・・ 宮本百合子 「漱石の「行人」について」
・・・妻となった若い婦人たちは、忽ち民法上能力を喪失し、人妻の「無能力」に陥ってしまう。そして、何か女性にとって不幸なめぐり合せが起るとそのことごとに結婚の条項において民法が規定している総ての不合理と片手おちとに苦しまなければならない。夫婦の愛に・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫