・・・作者は、しかし、人道的であり集団的活動の熱意をもって働いている主人公のありかたについて、もう一つ深めてみてもよかったと思う。主人公の僚友に対する責任感が、自身患者であるその人個人の安静の犠牲によって果されるしかないという療養所内の現実が、も・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・ 支那と云えば明治の始めから私達日本の人民は何時もなんとなしにおとった人民の様に思いこまされて居って、日清、日露そして第二次世界大戦に於ての中国全土にわたる日本軍の侵リャクを大して人道的に罪だとも思わせられない様になっていました。 ・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・人間の心は、こういうときはこうもなるものです、と居直ってすむものならば、非人道的な捕虜虐待で日本の軍人が戦争犯罪に問われる道義的根拠は失われる。最近ヒットしたルポルタージュの選手三人の座談会で、著者は、いよいよとなったら身を売っても仕方がな・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・ 人道的な感情で作品を貫いて来た山本有三が、当時を中心として彼の作品の中でも社会的意味の深い「波」「風」「女の一生」等を生み出していることも見のがすことは出来ない。上司小剣がこの時代から一大長編「東京」を思い立って四部作の第三部までを書・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・をみてもわかるとおり、いつもときの戦争に反対した人道的な精神はありました。天皇制の権力はそういう文学を非国民の文学とし最近の数年は治安維持法でとりしまりました。外国の人々は日本の婦人が、あれほど惨酷な戦争に対して何一つ組織立った抵抗をしなか・・・ 宮本百合子 「戦争と婦人作家」
・・・無邪気によい教育をする先生でありたいと思う心からの動きを投獄というおどかしでねじ伏せたところが過去の治安維持法の非人道的ないわれである。 おとなしい従順な「出発」に描かれているような教師の踏み出しをした人々さえ、その繩にとらえたところが・・・ 宮本百合子 「選評」
・・・という非人道的な発言が人民の運命に関して権力の使用人たちによって云われている事実を、人民としてわたしたちは許しておくべきではないと思う。人々が誠意をもって、少数者の利益のためにでっちあげられる戦争に反対を声明し、日本の人々をこめる世界の人民・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・飼主の命令のままに馴らされ、使役される犬猫から牛馬のたぐいは人道的なひとびとによって組織されている愛護デーをもつ。犬を愛するものも愛護される。だが、独立の人間としての理性から自由を愛し、より多くの社会人の生活の安定が見出されなければならない・・・ 宮本百合子 「動物愛護デー」
・・・て日本へかえってくれば、あの土地で行った悪虐ぶりは知らない顔で一等国になったと威張っていた日本軍閥――資本主義は、太平洋戦争の拡大された戦場の経験で、はじめて日本の人民に、戦争のむごたらしさと戦争の非人道的な性格を実感させた。 権力をも・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・そういう人が果して、人道的に、道義的に云って無罪でしょうか。私たちがあの人たちをここに立たせて、おじぎをすることが出来るでしょうか。裁判では、法律的な範囲内では無罪として釈放されました。皆さんは公務員法を御承知です。それからいろいろの新聞の・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
出典:青空文庫