・・・「あんたが片輪だからって、にべない仕打ちは私に出来ない。ただわたしは、あの人をすてかねるんだよ。みんな一緒に暮して、誰が誰を食わしてやってるなんて考えないことにしたら、いいじゃありませんか?」 李茂と向高とは、春桃と三人で暮しはじめ・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ 彼の心は、ただ土地が惜しい、年寄りの仕打ちが恨めしいというばかりではない、あのときの、あの歓びを憶い起すに耐えないような心持が――それだのにまた、憶い出さずにはいられない一見矛盾した感情が、自分でどう自分を処していいか分らないように湧・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・を打ちくだいていると結んでいるのであるが、役人の仕打ちを怨み、東京市民を怨みつつ資本主義的な力に踏みにじられる錯綜を記録的に各面からとり上げようとしている作品の結びとして、これは必要なだけの深さと重さとに不足している。長篇が愈々最後の一行と・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ それより此の次もう一円増してやる方が、息子の無情な仕打ちを差し引いて功徳になるように思われた。彼女は台所へ戻ると又土瓶を冠って湯を飲んだ。六 勘次は後から追って来る秋三の視線を強く背中に感じ出した。足がだんだんと早くな・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫