・・・ 娘はひとり東京へ帰り、母方の親戚の進歩党代議士、そのひとの法律事務所に勤めているのだという。 母が死んだという事を、言いそびれて、どうしたらいいか、わからなくて、とにかくここまで案内して来たのだという。 私が母の事を言い出せば・・・ 太宰治 「メリイクリスマス」
・・・科学的な知識などは一つも持ち合わせなくても大政治家大法律家になれるし、大臣局長にも代議士にもなりうるという時代が到来した。科学的な仕事は技師技手に任せておけばよいというようなことになったのである。そうしてそれらの技術官は一国の政治の本筋に対・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・また、国民の選良であるところの代議士達でこういう問題にいくらかでも理解をもっている人の如何に少数であったかということも知る人は知っている通りである。 凶作の原因となる気温異常には他にも色々な原因はあるとしても一つの因子としてこれと東北沿・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・そうして国民の選良たる代議士でだれ一人として山火事に関する問題を口にする人はないようである。 数年前山火事に関する若干の調査をしたいと思い立って、目ぼしい山火事のあったときに自分の関係の某官衙から公文書でその山火事のあった府県の官庁に掛・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・頭髪にチックをつけている深水は、新婚の女房も意識にいれてるふうで、「――わしも応援するよ、普選になればわれわれ熊連は市会議員でも代議士でも、ドンドンださんといかん」 いいながら、こんどは三吉を仲間にいれようとする。「君ァどうかね・・・ 徳永直 「白い道」
・・・ば人間の一生は連続している、嬰児期幼児期少年少女期青年処女期壮年期老年期とまあ斯うでしょう、ところが実はこれは便宜上勝手に分類したので実は連続しているはっきりした堺はない、ですから、若し四十になる人が代議士に出るならば必ず生れたばかりの嬰児・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・去年の春の選挙に婦人代議士がどっさり出て、そのことは、知識階級の婦人たちをかえって失望させもした。そして、その騒々しさからは幾歩か身をはなしておいて、政治的には発展せず、政治屋ふうになった一部の婦人のうごきを眺めている気分も感じられる。・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・タフト・ハートレー法に賛成し、非アメリカ委員会のゆきすぎの活動を放任した代議士がそのなかにふくまれている民主党が、タフト・ハートレー法の撤廃を第一にかかげて労働組合員の投票をあつめ、進歩的な男女の票をあつめなければならなかったところにこそ、・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・だから、たとえば日本の婦人の社会的地位の進歩という場合、婦人代議士、特殊な芸術家、科学者などの業績をはかることばかりでは一面的です。日本においては、繊維産業に働く女の子の生活と意識の水準がどの辺にあるかということが、必ずみられなければなりま・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 山下春江代議士の日ごろの態度にもすきがあったことはたしかでしょう。婦人代議士があれほど、「婦人の問題は婦人の手で」といって立候補しながら議会開会の全期間をつうじてその議場の演壇からもっとも雄弁にうったえることができたのが今日の醜態事件・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
出典:青空文庫