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・・・蒲田で、澄子その他が麻雀をして遊んでいると、その遊戯を知らない何とか君という、ひどく太い眉毛の若者が傍のソファで仮睡をし、夢で女賊マジャーンに出会するという筋なのだが――マジャーンが、スワンソンの蜂雀通りの扮装でスクリーンの上に蜂雀通りの順・・・
宮本百合子
「茶色っぽい町」
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・・・ 赤や黄色の星どもは、布の上からこぼれ落ちそうに燦きます。仮睡んでいた月は静かに一廻りして皎々と照り出します。いつか出て来たお婆さんはその中で、楽しそうに美しい絹糸を巻き始めました。三匹の鼠は三つの処に分れて立ち、糸車のように体の囲りで・・・
宮本百合子
「ようか月の晩」