・・・ なんにもしない、人間を、一ツの警察から、次の警察へ、次の警察から、又その次の警察へ、盥廻しに拘留して、体重が二貫目も三貫目も減ってしまった例がいくらでもある。会合が許されない。僕の友人は、労働歌を歌っていて、ただ、それだけで一年間尾行・・・ 黒島伝治 「鍬と鎌の五月」
・・・こう会合できめたのであった。会の時には、一人の反対者もなかった。それがあとになって、自分の利益や、地主との個人的関係などから寝返りを打とうとする者が二三出て来たのであった。 宇一の家には、麦が穂をはらんで伸びている自分の田畑があった。ま・・・ 黒島伝治 「豚群」
・・・いわんやまた趣味には高下もあり優劣もあるから、優越の地に立ちたいという優勝慾も無論手伝うことであって、ここに茶事という孤独的でない会合的の興味ある事が存するにおいては、誰か茶讌を好まぬものがあろう。そしてまた誰か他人の所有に優るところの面白・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・作品を読んだ事は無かったが、詩人の加納君が、或る会合の席上でかなりの情熱を以て君の作品をほめて、自分にも一読をすすめた事がありました。自分も、そんなら一度読んでみようと思いながら、今日までその機会が無く、そのままになっていました。先日、君の・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・一年すぎて、私の生活が、またもや、そろそろ困って、二、三の人にめいわくかけて、昨夜、地平と或る会合の席上、思いがけなく顔を合せ、お互い少し弱って、不自然であった。私は、バット一本、ビイル一滴のめぬからだになってしまって、淋しいどころの話でな・・・ 太宰治 「喝采」
・・・いつか、私の高等学校時代からの友人が、おっかなびっくり、或る会合の末席に列していて、いまにこの辺、全部の地区のキャップが来るぞと、まえぶれがあって、その会合に出ているアルバイタアたちでさえ、少し興奮して、ざわめきわたって、或る小地区の代表者・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・その一つには、私が小さい時から人なかへ出ることを億劫がり、としとってからもその悪癖が直るどころか、いっそう顕著になって、どうしても出席しなければならぬ会合にも、何かと事を構えて愚図愚図しぶって欠席し、人には義理を欠くことの多く、ついには傲慢・・・ 太宰治 「善蔵を思う」
・・・引っ返すこの男と、あとから出発した直八と、中間を歩いている子供とが途中で会合することを暗示しただけで幕をおろすという暗示的な手法をとった一方で、こんな露骨なお芝居を見せるのは矛盾である。 ついでながら、歩幅と同時に歩調を勘定に入れなけれ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・ ところが、おかしなことにはつい近年になってこのM君の無意味らしく思われた言葉が少しずつ幾分かの意味を附加されて記憶の中に甦って来るような気がする、というのは、どうかして宴会や友達との会合などが引続いて毎日御馳走を喰っていると、その揚句・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・ こんな事をうかうか考えている自分を発見すると同時にまた、現在この眼前の食堂の中に期せずして笑い上戸おこり上戸泣き上戸三幅対そろった会合があったのだという滑稽なる事実に気がついたのであった。・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
出典:青空文庫