・・・ 二葉亭の苦悩は、文学というものがもし現在自分のぐるりに流行しているような低俗なものであっていいのならば、文学は男子一生の業たるに足りないものであるというところにあった。二葉亭自身は、人生と社会とに何ものかを齎し、人々に何かを考えさせ感・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・悪循環の下に居直ったように、俺が悪いんじゃない、あの時はあれでしようがなかったのだ、というような人生態度は芸術的に人間的に低俗で、長いものにはまかれろ式なものであり、近代文学の本質的な意欲のないものと思います。 一方にはまた、戦争中べつ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・この人の文章を読むと、作家というものに対して筆者の抱いている評価、理解の低俗さに、どんな作家でも芸術の階級性以前の問題として一種の公憤を感ずるであろうと思う。 リオンスの作家観をもってすれば、芸術院へ入ることを正宗白鳥氏がことわったこと・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・まらない生活の反対物をカフェーに見出したところに、子供のうちから消費生活にだけ馴らされた娘の気分と、今日の貴族階級が生活感情の実質においては、赤化子弟に対する宗秩寮の硬化的態度に逆比例するデカダンスや低俗なエロティシズムに浸透されていること・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ 大体、過去においてオノレ・ド・バルザックについて書いたほどの人で、彼の貴族好みに現れた趣味の低俗さを指摘しなかった伝記者、評論家は一人もなかったと云っても過言ではないであろうと考える。 頻繁で噪々しい笑いの持ち主、その頃流行の・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・逆から見て、働く若い娘たちの感情生活の中心は低俗感傷な映画であって、同じ女が芸術上の貢献をしていようが、科学上の業績を立てていようが、他の星の世界でのことというような状態も、文化の大きい歪みと悲しみとでなければならない。そのような分裂の状態・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・永年支配階級の文化政策にしたがえられてきた労働者、一般勤労階級がどんなに旧い低俗ないわゆる文化性に毒されているかということは、こんどの大会で文学サークル協議会から、詩、小説、文学サークル雑誌の質についての報告、批判があったことを見てもよく諒・・・ 宮本百合子 「両輪」
出典:青空文庫