・・・こういう本質をもった論文は書かれなければならないが、やっぱり、文学の世界の住人以外の人に、これだけでは、不十分です。やっぱり、基本的諸問題の解明がなくては、派生する論議はわからないし、民主主義文学運動自体を推進させるために、社会主義的リアリ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・或人が折角夫人同伴で来たのに、上陸も許されないで直ぐ其船で追帰されなければならない悲惨なことがあったそうだけれど、出島の住人は、内心却って好い位だったんですって」「何故?」「だって――貴婦人が来たら困っちゃうのよ皆」 ・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・薩摩人が或る距離を置いてそこに視たものを、長崎港の住人は体中に浴びた。水と一緒に腹の中に飲んだ。薩摩人にとって知識としてのみ存したものが此方では日常生活の中に血に混じて流れるものとなり、箇人の感情や気質の一部をなすに迄融合してしまったのでは・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・そこの住人であった一人の廃兵と労働者とが憲兵に引っぱって行かれた。プレットニョフはこのことを知ると、興奮してゴーリキイに叫んだ。「おい! マクシム! 畜生! 走ってけ、兄弟、早く!」 ゴーリキイは、合図の言葉を知らされて「燕のように・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・そこの住人であった一人の廃兵と労働者とが憲兵に引っぱられた。プレットニョフはこのことを知ると、興奮してゴーリキイに叫んだ。「おい! マキシム、畜生! 走ってけ、兄弟、早く!」 ゴーリキイは、合図の言葉を知らされて、「燕のように迅く」・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・けれども、暫く、強いても、此那家に住んで見ると、住居と云うものが、住人の趣味やケーアによって、如何那に変化するものか、又、一寸見はたまらないような場所でも、大体辛棒が出来れば、決して落胆せずに手を入れられると云うこと等が判って来たのである。・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・ 役所の令丁がその太鼓を打ってしまったと思うと、キョトキョト声で、のべつに読みあげた――『ゴーデルヴィルの住人、その他今日の市場に出たる皆の衆、どなたも承知あれ、今朝九時と十時の間にブーズヴィルの街道にて手帳を落とせし者あり、そのう・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
出典:青空文庫