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・・・彼らは私の静かな生活の余徳を自分らの生存の条件として生きていたのである。そして私が自分の鬱屈した部屋から逃げ出してわれとわが身を責め虐んでいた間に、彼らはほんとうに寒気と飢えで死んでしまったのである。私はそのことにしばらく憂鬱を感じた。それ・・・
梶井基次郎
「冬の蠅」
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・・・けだし暴君汚吏の余殃かくの如くなれば、仁君名臣の余徳もまた、かくの如し。桀紂を滅して湯武の時に人民安しといえども、湯武の後一、二世を経過すれば、人民は国祖の余徳を蒙らず。和漢の歴史に徴しても比々見るべし。政治の働は、ただその当時に在りて効を・・・
福沢諭吉
「政事と教育と分離すべし」