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・・・ 年とった支那人はこう言った後、まだ余憤の消えないように若い下役へ話しかけた。「これは君の責任だ。好いかね。君の責任だ。早速上申書を出さなければならん。そこでだ。そこでヘンリイ・バレットは現在どこに行っているかね?」「今調べたと・・・
芥川竜之介
「馬の脚」
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・・・僕はまだ余憤を感じたまま、出来るだけ足早に歩いて行った。が、いくら歩いて行っても、枳殻垣はやはり僕の行手に長ながとつづいているばかりだった。 僕はおのずから目を覚ました。妻や赤子は不相変静かに寝入っているらしかった。けれども夜はもう白み・・・
芥川竜之介
「死後」