・・・それでなければ今頃こんな消極的な俗吏になって、毎日同じような消極的な仕事を不思議とも思わずやっている筈はないかも知れぬ。いったい自分は法科などへはいってこんな俗吏になろうと云うような考えは毛頭なかった。中学校に居た頃、先では何になる積りかな・・・ 寺田寅彦 「枯菊の影」
・・・ 明治一六年二月編者識と記すべき法なるを、ある時、林大学頭より出したる受取書に、楷書をもって尋常に米と記しければ、勘定所の俗吏輩、いかでこれを許すべきや、成規に背くとて却下したるに、林家においてもこれに服せず、同家の用人と勘定所の・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・一、官の学校には、教師の外に俗吏の員、必ず多く、官の財を取扱うこと、あるいは深切ならずして、費冗はなはだ多し。この金を私学校に用いなば、およそ四倍の実用をなすべし。その失、一なり。一、官の学校にある者は、親しく政府の挙動を聞見して、・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
出典:青空文庫