・・・ すべての人民は働く権利がある、ということが男女差別の扱いなく行われ、すべての働いて生きる者は必要な社会保険によって最低保障は与えられるということが実現しなければ、結婚という一つの場合だけでさえ当事者の「自由な意志」というものは、皮肉な・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・「人権とは政治的自由だけを指すものではなく、さらに働く権利、社会保障をうける権利、相当な生活水準を維持する権利などの社会的経済的諸権利をも含むもので」「戦争の災禍が骨身に徹しており、かつ個人の精神的物質的幸福を無視することが、どのような結果・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・人民社中の日暦の同人、荒木巍氏など先頭に立って「もしやられたら僕らの生活を保障してくれるか」と武田に迫った由。そんなこと出来るものか、じゃ解散しろ、それで急に解散した由である。武田が荒木に「では君がさっさと脱退したらいいじゃないか」と云った・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
・・・幸、女子が何か職業を持ってい、その収入と合わせれば、優に二人の生活は保障されると云うような場合、事は容易に運ぶかもしれませんが、婦人が左様なものも持たず、又結婚後、家庭外に職業を持つことなどをよしとしない意見を捨てない女性であったりした時に・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・女子の専門学校や大学の学校仲間というものも、これまでのように、親の資力の大さでそこの生活が保障されて来た娘たちの集り場所であっては、結局、生活の問題までをわかち合う仲間としての友情は生じにくかった。 もうこれからは、どこの図書館でも、婦・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・ 親達の意見は、物質的に保障のない、社会的に位置のない彼を真ともに世間に向けて生活するよりは、父の威を暗示し得る中條姓で行く方が、世間の人間に尊敬を感じさせ易く、私共の結婚に就て、喋った人の口もふさげ、仕事も出来ようと云うのである。・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・は必ずしも、人間らしい地位でもないし、明日の保障をうけた歴史の前進に伴う地位でもない。或は「悲しきかかし」の別名かもしれないのである。 演技の前提としての人間的確立などということは、近代の芝居道ではおどろくべく古い云い草なのだろうと思う・・・ 宮本百合子 「俳優生活について」
・・・然し、現実は複雑で、事に当って見ると、先ず結婚の世話に迄のり出せば勢い会社がそれらの人々の生活保障に責任をもたねばならないこととなり、手当を一人分だけですませなくなるということなどから、関係会社は一向気のりして来ないのだそうだ。「むすび会」・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・ 生活の安全、幸福と云うものは、只、金でだけ保障されると思って媒妁人は、心から彼女の為を計って、却って、富の程度に比例した非人間に、彼女を紹介する誤を犯して仕舞ったのです。 過般、私が遭った時、彼女は、噂に聞いて陰ながら悦んでいた二・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・そしてアサの時代は婦人労働者が未組織だったのだということを考え、同時に、現在は組織されていてもまだめいめいの個人生活の苦痛は、個人的な解決にまかされている部面の余り多いことにくらべて、はるかに社会保障の大きい社会主義の社会を思いくらべずにい・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
出典:青空文庫