-
・・・――いやしくも廓の寮の俳家である。卯の花のたえ間をここに音信るるものは、江戸座、雪中庵の社中か、抱一上人の三代目、少くとも蔵前の成美の末葉ででもあろうと思うと、違う。……田畝に狐火が灯れた時分である。太郎稲荷の眷属が悪戯をするのが、毎晩のよ・・・
泉鏡花
「開扉一妖帖」
-
・・・精細なる句の俗了しやすきは蕪村のつとに感ぜしところにやあらん、後世の俳家いたずらに精細ならんとしてますます俗に堕つる者、けだし精細的美を解せざるがためなり。妙人の妙はその平凡なるところ、拙きところにおいて見るべし。唐詩選を見て唐詩を評し、展・・・
正岡子規
「俳人蕪村」