・・・結婚というものを否定しはじめると、これは又何と痴鈍に頑固に、非現実的に偏執的になるのであろう! この点では殆どすべての読者をおどろかすものがある。アグネスは、結婚の腐敗から女を救い、よりましな結婚を存在させる社会をつくるためには、一組一組ず・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・反感を含んだ批評家は、バルザックが手紙の中でも自分のことしか書かぬ程自我的であったこと、情熱の制御を知らなかったこと等を部分的にとりあげて、一種病的な偏執狂的傾向があったと言っている。そのような批評家は同じ考えを作品にまで敷衍して、バルザッ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
昔から女にもとめられている日常の美徳の一つに、ものわかりのよさ、ということがある。 とかく女が狭い生活にとじこめられていたために、人生の視野がせばまって、我執だの偏執だのが女につきものの気質のように見られた一方の、その・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・非常に広濶な、偏執のない心が、あらゆる対象へ差別のない愛を注ぎながら、静かに、和やかに、それらを見まもっている、――そういう印象を与える。しかしそれは、木下杢太郎が実際生活においてそういう博大な心を持っている、という印象ではない。彼は享楽人・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
出典:青空文庫