・・・あの特異な自然を活かして働かすような詩人的な徹視力を持つ政治家は遂にあの土地には来てくれないのだろうか。 最初の北海道の長官の黒田という人は、そこに行くと何といっても面白いものを持っていたようだ。あの必要以上に大規模と見える市街市街の設・・・ 有島武郎 「北海道に就いての印象」
・・・「いつも俺等に働かすんは、あぶないところばっかしじゃないか。――そこを、そんなり、かくさずに見せてやろうじゃないか。」「そうだ、そうだ。」「馬鹿々々しい上ッつらの体裁ばかり作りやがって、支柱をやらんからへしゃがれちゃったんじゃな・・・ 黒島伝治 「土鼠と落盤」
・・・ビーカーに水を汲むのでも、マッチ一本するのでも、一見つまらぬようなことも自分でやって、そしてそういうことにまでも観察力判断力を働かすのでなければ効能は少ない。使用する器械が精巧なほど使用の注意も複雑になるから、不注意に機械的申訳的にやるので・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・それのみか、腕ききの腕を最も敏活に働かすという意味に解釈した酒と女は、仕事のうえに欠くべからざる交際社会の必要条件とまで認めていた。それだのに彼らはやがて眉をひそめなければならなくなってきた。かねてじょうぶであった娘の健康が、嫁にいってしば・・・ 夏目漱石 「手紙」
・・・すなわち物に向って知を働かす人と、物に向って情を働かす人と、それから物に向って意を働かす人であります。無論この三作用は元来独立しておらんのだから、ここで知を働かし、情を働かし、意を働かすと云うのは重に働かすと云う意味で、全然他の作用を除却し・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・だからある点ではこれらの民主主義社会は、すべてのものの幸福のためにつくられた社会であるといわれているけれども、その内部では働かすものと働かされるもの、婦人と男子の間には、幸福と不幸の開きが決定的にあるわけです。 今日の地球の面では、面白・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・婦人が働くのは結婚までという使用者の考え方は、全く安い労働力の利用ということ以外にありません。働かす条件が悪くても、どうせまだ親がかりだなどといういいわけで、職場の設備の悪いことも、厚生施設のないことも、第二の問題のように扱います。 働・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・自身の理性の最大を働かすだけの刺戟をうけるのである。 シーモノフにおけるこの経験は、エレンブルグのアメリカにおける経験よりも、ソヴェト文学にじかにつよい作用をうつすであろう。エレンブルグは、その気質、年齢、外国生活のながい経験などによっ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・工場の知ったことか。働かすためにお前を雇っているのだというから、また翌日からフラフラの体を押して働きに出る。亭主だって僅の賃銀をもらい、しかも酒を飲むから、女房が働かなければ口がすごせない。 工場へ赤ん坊はつれて行けないから、四つ五つの・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
・・・一日十一時間半も働かす。 満州を足場に日本のブルジョア、地主はソヴェト同盟に侵略しようとし、同時にわれわれ働く大衆の力をくじこうとしている。われらは、それをはねかえし、帝国主義の戦争に反対し、ソヴェト同盟を守れ! 首キリ反対! 失業手当・・・ 宮本百合子 「婦人読者よ通信員になれ」
出典:青空文庫