・・・外務省の国際文化振興会にしても、日本の自然の美しさを高価なグラビア版にうつしたり、雛祭りの飾りを紹介したりして、日本の文化的優越を示そうとした。 日本精神という四字が過去十数年間、その独断と軍国主義的な狂言で、日本の精神の自然にのびてゆ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・戦争は殺すということについて英雄心をもたせ、優越感を与えてきた。殺人を権力が正当化しました。戦の罪悪は、戦がその戦場でやった非人道的なことのほかに、こうして殺すという恐ろしいことについて無感覚になった人間を非常にたくさん日本の中にもたらした・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・ 外面の卑下と内面の優越をもって「であります」調の私的評論が流行したのも一九四九年の一現象であった。個人としてそれらの人々がどのように歴史の現実をうけとり、それを表現し、そのことによって、進んでゆく歴史と自分との関係を、おのずから客観の・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・台湾、朝鮮のような植民地または中国、満州のような半植民地に発展していた人たちは、その土地と社会が本来は他の民族に属するものであって、そこで日本人は侵略者の立場をもっている事実を忘れた、優越感に安住していたのではなかったろうか。 一九四五・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・主義的リアリズムの提案は、それが他の国々で摂取され展開されたような過去の健全な進展としてよりも、日本では寧ろプロレタリア文学における小市民的要素のあるがままの状態での認容、インテリゲンツィアの技術上の優越というものの抽象的な再評価の要求によ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・する男性は、その遁辞を我からあおって、自分等の優越を誇って居ります。 此等に気焔を上げてしまいましたが、とにかく、此の積極的という事は、万事に就て、こちらの婦人の強みになって居ると思います。良人の僅かな月給を、どうしたら一銭少く使おうか・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・どうせ子供が教えられなければならないのなら、ファシズムや気狂いじみた民族優越主義や『国のあゆみ』、『民主主義』のような歪められたもので或る時期をひきまわされ、やがて、理性が発達すればもう一遍、現実認識の方法を自分でもちなおさねばならないよう・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・笑いや優越感をとおって屈従に近づけられてゆくのである。 ヴァイニング夫人の「皇太子の教育」と題される文章が「皇太子殿下の御教育」と日本化された翻訳で『文芸春秋』に発表されている。このなかに彼にとって、日本にとって悲劇的な一節がある。皇太・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・と彼らしく皮肉な自己の知的優越をもほのめかさずにはいられなかった。当時流行作家であったと共に一部からは権威とも目されていた芥川龍之介が、昭和二年七月「或旧友へ送る手記」を残して三十歳の生涯を終るに至った内外の動機は何であったろう。「少くとも・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・前者は自己を誇示して他人の前に優越を誇ります。後者は自己を鼓舞し激励するとともに、多くの悩み疲れた同胞を鼓舞し激励します。 あなたに愚痴をこぼしたあとでこんな事をいうのは少しおかしいかも知れません。しかし私はあなたに愚痴をこぼしている内・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫