・・・山岸宏の姉妹の一人は、中国への侵略戦争の当時、男装して軍と行動をともにして一冊の本をかきました。兄妹の情愛にファシストとしてながれる思想がつらぬかれていたわけです。 現実の社会はあまくありません。ファシストとよばれる人びとのなかにやはり・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・生れつき弱い赤坊であったことが書かれているが、兄妹について一筆も触れられていないところを見ると一人息子であったのだろうか。体の弱い勇造は高等小学校を卒業するとすぐ浅草の方の呉服屋へ奉公にやられた。奉公がいやでたまらず、本を読むことが好きな上・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・経済の事情が入りくんで来るにつれて、親子、夫婦、兄妹の家族内の関係もいろいろと複雑になって来ていて、私たちが真に人間らしい心持で、家族の生活を守り、高め、美しいものにしてゆくためには、今日ただ自分ひとりの気の持ちようだけでは屡々破綻する現実・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・中には、あれは夫婦ではあるまい、兄妹だろうと云うものもあった。その理由とする所を聞けば、あの二人は隔てのない中に礼儀があって、夫婦にしては、少し遠慮をし過ぎているようだと云うのであった。 二人は富裕とは見えない。しかし不自由はせぬらしく・・・ 森鴎外 「じいさんばあさん」
出典:青空文庫