・・・唯物史観に立脚するマルクスは、そのままに放置しておいても、資本主義的経済生活は自分で醸した内分泌の毒素によって、早晩崩壊すべきを予定していたにしても、その崩壊作用をある階級の自覚的な努力によって早めようとしたことは争われない。そして彼はその・・・ 有島武郎 「想片」
・・・あひるの場合でもやはりいわゆる年ごろにならないと、雌雄の差による内分泌の分化が起こらないために、その性的差別に相当する外貌上の区別が判然と分化しないものと見える。それだのに体量だけはわずかの間に莫大な増加を見せて、今では白の母鳥のほうがかえ・・・ 寺田寅彦 「あひると猿」
・・・ これとは話が変わるが、若い人にはとにかくとしても、もはや人生の下り坂を歩いているような老人にとっては、映画の観覧による情緒の活動が適当な刺激となり、それが生理的に反応して内分泌ホルモンの分泌のバランスに若干の影響を及ぼし、場合によって・・・ 寺田寅彦 「映画と生理」
・・・ われわれが格別の具体的事由なしに憂鬱になったり快活になったりする心情の変化はある特殊の内分泌ホルモンの分泌量に支配されるものではないかと思われる。それが過剰になると憂鬱になったり感傷的になったり怒りっぽくなったりするし、また、過少にな・・・ 寺田寅彦 「五月の唯物観」
出典:青空文庫