・・・これは、その限りでは正当であるし、今日の中国の人々が自分たちの国土の中で行われている分割占拠に猛然と反対している感情とも一致したものである。「分裂せる家」の淵の自尊心ある中国のインテリゲンツィアとしての心理をバックは大変よく描いている。けれ・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・それはヨーロッパ列強に分割されたポーランドで生れたショパンのことである。それから崔承喜をはじめ、朝鮮出身の歌手たち舞踊家たちのことである。日本の権力は植民地であった朝鮮の人民の間からすぐれた政治、経済面の活動家が、成長してくることを極力ふせ・・・ 宮本百合子 「手づくりながら」
・・・ると同時に、大革命時代に「没収されていた教会僧院の財産は勿論、或は分割され、或は競売に附せられた貴族の財産も亦今や嚮日とは比較にならない程数多い新所有者の手に帰したのである。従って金銭がブルジョア生活の動力となり、又同時に万人の渇望の対象と・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・一八五三年に英露のトルコ分割を目的とするクリミヤ戦争が起った。この戦役におけるイギリス負傷兵の状況の酸鼻が、しばしば議会の問題となり、世界の注目がそこにあつめられた。この時代まだ笞刑の行われていたイギリス陸軍の兵士が、クリミヤ戦争で傷つき、・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・そして小さい日本が大国と戦争して勝ち、つよくて金のある列強と対等のつき合いをし、応分の植民地分割にあずかるということに国内の現実からは消えた、四民平等の夢をつないだのであった。 事実、戦争がはじめられたとき、日本の人民は、はじめて権力に・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・土地の有償自作創立案を政府が発表するや否や、日本中の大地主たちは、忽ち親族間に土地を分割しはじめた。そして小地主の土地をとり上げはじめた。 そもそも婦人参政権を認めたにしても、極めて形式的で誠意のないことにおどろかされる。婦人に参政権は・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・そこで阿部家の俸禄分割の策を献じた。光尚も思慮ある大名ではあったが、まだ物馴れぬときのことで、弥一右衛門や嫡子権兵衛と懇意でないために、思いやりがなく、自分の手元に使って馴染みのある市太夫がために加増になるというところに目をつけて、外記の言・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫