・・・犬はその餌を持って来る人が何人であろうとも、実験上習慣となっている一定の時間に餌を見れば盛んに反射作用を起して胃液を分泌した。人間にも食慾がある。食べたい時に食物を見れば、反射作用を起して口の中は湿っぽくなる。けれども忘れてならないことは、・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ 断種の科学性と人類を幸福にする効果とをひろく理解させようとする夫人達は、果してどの位深刻に、真に断種すべきものは男性の或る分泌腺ではなくて、一切の社会悪と疾病との根源である社会そのものの歪んだ非人間的構成であることを観察していられるで・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・塹壕の中には膿を浮かべた分泌物が溜っていた。そこで田虫の群団は、鞭毛を振りながら、雑然と縦横に重なり合い、各々横に分裂しつつ二倍の群団となって、脂の漲った細毛の森林の中を食い破っていった。 フリードランドの平原では、朝日が昇ると、ナポレ・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫