・・・戦時利得税、財産税についての解説一つでも真面目に聴いたらば、人民は、曖昧な日本的薄笑いを口辺に浮べてはいないと思う。貿易局の頭に三井財閥を坐らせている政府。銀行、大企業が、9/10を所有している戦時公債を、財産税でとりあげた人民の金で償還し・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・戦時利得税をいずれ払わなくてはならず、しかも、大財閥に対してのように、政府が様々の法式を考案して、とり上げた金をまた元に戻してよこしてくれる当もない。戦時成金ばかりが、昨今、使ってしまえという性質の金銭をちらしているのである。 つい先頃・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・そして、こんにち、公団の腐敗その他、特権に必ずつきまとっている不正な利得、人民の富の奪取を、どうしようもない政治の無能の反映でもある。 文学の面でも、最近、明治からの現代古典を体系的に見直してゆこうとする一つの傾向があらわれている。・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・便乗という言葉が日本の津々浦々にまではやったのにくらべて、現実に便乗してしっかり何かの利得を掴んだという人の数がすくないのに、むしろびっくりしはしないだろうか。 戦争がだんだん大規模になって行った時期、軍需会社は大小を問わず儲けはじめた・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・良人のある程度までの浮気も、家庭生活が守られてゆけば、とものわかりよく、この程度のことは今の世の中では常識だからと地位から来るあれこれの利得に潔癖すぎもしない。そういうのも、やはりものわかりのわるい女には入らないのである。 若い女性の成・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・ところが、ここに政府の戦時利得税、財産税についての法案が臨時議会を通過した。先達てラジオで読売新聞社の論説部員が、非常にはっきりと分りよく、私達の生活にとって、この戦時利得税と財産税というものが、どういう関係を持っているかということを説明し・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫