・・・ この頃に至って、私は、ようやく虚名からも、また利欲からも、心を煩わされなくなりました。たゞ、自分の理想に生きるということ、正義のために戦わなければならぬということ、そして、要するに、人間は、いかなる職業にあっても、その心がけが、社会の・・・ 小川未明 「机前に空しく過ぐ」
私達は、この社会生活にまつわる不義な事実、不正な事柄、その他、人間相互の関係によって醸成されつゝある詐欺、利欲的闘争、殆んど枚挙にいとまない程の醜悪なる事実を見るにつけ、これに堪えない思いを抱くのであるが、それがために、果して人間その・・・ 小川未明 「人間否定か社会肯定か」
・・・ 利欲のほかに何物もない人たちが戦時の風雲に乗じていろいろなきわどい仕事に手を出し、それがほとんど予期されたはずの変動のために倒れたのはどうにもしかたがないとしても、そういう人の妻子の身の上は考えてみれば気の毒である。 突然すぐ前の・・・ 寺田寅彦 「写生紀行」
出典:青空文庫