・・・ 追加広告 前掲の広告中、「里見君に非難を加えて下さい」と言ったのは勿論わたしの常談であります。実際は非難を加えずともよろしい。わたしは或批評家の代表する一団の天才に敬服した余り、どうも多少ふだんよりも神経質になったよう・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・それなら、なぜクロポトキンやマルクスや露国の革命をまで引き合いに出して物をいうかとの詰問もあろうけれども、それは僕自身の気持ちからいうならば、前掲の人人または事件をああ考えねばならなくなるという例を示したにすぎない。気持ちで議論をするのはけ・・・ 有島武郎 「片信」
・・・ 俳諧連句においては実に巧妙にこれら音響のモンタージュ手法が採用されている。前掲「灰汁桶」の句ではしずくの点滴の音がきりぎりすの声にオーバーラップし、「芭蕉野分して」の句では戸外に荒るる騒音の中から盥に落つる雨漏りの音をクローズアップに・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・たとえば前掲の「ふとん」の次に「不届」「はっち」と三つのFTの結合が現われている。「けんかく」の次に「こまかく」が来たりするのも必ずしも偶然とは思われない。もうすこし不明瞭なのでは「かえるやら山陰伝う四十から」の次に「むねをからげる」があり・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
出典:青空文庫