・・・思いついて、先ず五十円券をどっさり買わせ、それで第一段儲け、ついで五人のひとに百万円あてさせて、こんどは売れのこりに一本あったから四百万円だけはらって、それが何かの形でまた逆にかえって来て、金まわりを助けてゆく。こういうことは、わたしたちの・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・あなたは神や仏が本当に助けてくれるものだと思っていますか」 九郎右衛門は物に動ぜぬ男なのに、これを聞いた時には一種の気味悪さを感じた。「うん。それは分からん。分からんのが神仏だ」 宇平の態度は不思議に恬然としていて、いつもの興奮の状・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・しかし、これらの憐れにも死に逝く肺臓の穴を防ぎとめ、再び生き生きと活動させて巷の中へ送り出すここの花園の院長は、もとは、彼の助けているその無数の腐りかかった肺臓のように、死を宣告された腐った肺臓を持っていた。一の傷ついた肺臓が、自身の回復し・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫